飼育観察

採集〜飼育するなら繁殖(累代飼育)に挑戦することが、その生態を知る一番の近道



オオルリオサムシ
Damaster gehinii

日本固有種で、北海道のみに生息。
北海道が世界に誇れる美麗種で人気が高い。
主にカタツムリ食なので、飼育法は同じカタツムリ食であるアイヌキンオサムシ、エゾマイマイカブリにも適用できる。
生態の詳細はこちら↓
オオルリオサムシ
オシマルリオサムシ
アイヌキンオサムシ

エゾマイマイカブリ

オサムシ類は数年生きるといわれているが、交尾〜産卵を行った個体はまもなく死ぬものが多い。
オオルリオサムシの寿命は越冬1回で1年と思われる。


採集
北海道の固有種で、やや局地的な分布だが平地〜山地にかけて比較的普通に生息しているオサムシ。
と言っても、山の中を闇雲に探しても見つかるものではない。
オサムシの主な採集法は以下の3つ。

PT(ピットフォールトラップ)
プラスチック製コップを生息地に埋めて、落ちるものを採集する方法。
食酢や希釈した酢酸を入れて誘導させると効果的。カップ側面には雨水で溢れてしまわないように数ヶ所穴を開けておく。
長所は、設置場所と設置数によるが、効率よく採集できること。
短所は、設置日と回収日で少なくても2回現地へ行かなくてはいけない事と、誘引された目的でない生き物まで殺してしまうこと。
注:仕掛けたカップは成果の有無に関係なく必ず回収する事。

オサ掘り
山道脇の斜面や林内の土盛りなどで越冬しているオサムシを掘り返して採集する方法。
北海道では雪の少ない地方(太平洋側)か、雪が積もる前の晩秋か雪の融けた早春に限られる。
慣れていないと、採集場所の予測がなかなか難しい。
寒い中での作業で、労力の割には効率が悪く、作業中に個体を傷つけてしまうことも多い。
広範囲に掘り返すので、関係のない越冬中の生物まで掘り返してしまう。

側溝探し
側溝内に入り込んだオサムシを採集する方法。
オサムシは側溝内を自由に出入りできるため、1日ごとに結果が変わる。
長所は、簡単であるため初心者でもできる。環境に影響を与えない。
短所は、多く採集できないこと。先に採集者がいた場合は絶望的。その日の天候に左右される。

※ 3つの方法とも時期・場所の見極めが必要だが、経験を積み要領が分かれば採集効率は上がる。


飼育環境

<成虫飼育容器>
ホームセンターなどで売っているプラスチック製収納ケースを利用。
蓋には小バエ侵入防止のためストッキングを被せてある。



<幼虫飼育容器>
小型プラ容器やカブトムシ・クワガタムシ幼虫飼育用カップを使用。
基本的に、幼虫1匹に対して1容器を使用。

飼育生物 オオルリオサムシ(卵〜成虫)
飼育水槽 プラスチック製収納ケース(成虫)
小型プラスチック容器(幼虫)
床材 クワガタムシ飼育用マット・砂
照明 なし

隠れ場所として半分に切った植木鉢と市販の落ち葉を配置。
落ち葉を敷くと管理しづらくなるが、隠れる場所は必要。

土の中に潜って産卵するので、床材は少なくとも5cmくらいの深さが望ましい。
床材はクワガタ飼育用マットに砂を2:1くらいの割合で混合したものにすると、卵室や蛹室を作りやすく崩れづらい。
成虫は複数飼育でも問題ない。

 暑さと蒸れに弱い傾向があり、特に幼虫は弱いので、夏場は日陰で風通しの良い場所に置く。

小バエが発生防止のために、蓋には目の細かいシートなどを取り付ける。
ストッキングなどで代用可。
小バエは一度発生してしまうと、根絶は困難なので、発生した場合は、床材を交換し、容器をよく洗って一度リセットした方がいい。


給餌
餌はカタツムリを与え、クワガタムシ用ゼリーも併用している。
ゼリーは好物だが、繁殖にはカタツムリが必要不可欠
カタツムリは基本的には生きたまま与えるのが望ましいが、万が一のため冷凍保存すると便利。
生きたカタツムリは容器の側面や上面へ移動してしまうので、こまめに下へ落とすか、容器の底と上面までの高さを無くす対策が必要。
幼虫にエゾマイマイを与える場合は、襲われたカタツムリが強力な粘液(泡)を出して抵抗し、その粘液に絡まり身動きが取れなくなって死んでしまうこともあるので要注意。(幼虫のサイズに合ったカタツムリを与えるか、殻を割って弱らしたものを与えることで事故を減らす事ができる)


幼虫は、冷凍餌(カタツムリ)でも食べるが食いが悪く、食べ残しも多い。

幼虫・成虫ともに豚肉を与えても食べるが、脂肪分の高い餌を与えていいものか疑問。
スジエビ(淡水エビ)の剥き身は、食べたが良質の餌になるかは不明。


エゾマイマイカブリは食欲旺盛で、カタツムリの他にも鱗翅目の幼虫なども好んで捕食する。クワガタムシ用ゼリーもよく食べる。


カタツムリにかぶりつく成虫
時間をかけてじっくり消化して食べる。

冷凍餌(カタツムリ)を適度に切って与えても食べてくれる。



飼育記録
<オオルリオサムシの交尾>
雌雄を一緒にすると間もなく交尾を始める。

<オオルリオサムシの卵>
楕円形で4mmほどの大きさ。
色は白色。

雌は地面に穴を掘り卵室を作り、そこに産卵する。

<オオルリオサムシの幼虫>
孵化間もない幼虫。大きさは8mmほど。
孵化直後の色は白い。
幼虫は孵化後、すぐにカタツムリを食べ始め、成長は早く、カタツムリを食べた幼虫は2倍ほどに大きくなる。

体型はマイマイカブリの幼虫に酷似している。

25mmほどに成長した終令幼虫。
孵化率は高いが幼虫の生存率は低い。
原因として幼虫同士の共食いがあるが、カタツムリの殻の中で死んでいるものも数匹あった。
対策として幼虫は単独飼育するのが望ましい。

蛹化までに必要な餌となるカタツムリは、1匹当たり3〜4匹程度と意外に少ない。

終令幼虫になり、気温が低くなると幼虫は土の中に潜り越冬休眠に入る。

<オオルリオサムシの蛹>
春、暖かくなり越冬休眠を終えると蛹化する。
飼育下では幼虫が土中に潜り込んで3ヶ月以上経過してから蛹化した。

蛹の全体は乳白色で眼の部分のみ黒色。
羽化が近づくと、頭部付近が黒くなっていく。
約10日ほどで羽化する。

エゾマイマイカブリは蛹化率が高いが、オオルリオサムシは低い。
土質・温度・湿度などの飼育環境が影響していると思われるが、よく分からない。

<オオルリオサムシ新成虫>
羽化直後は、乳白色をしている。


<飼育個体新成虫>
羽化後しばらくすると、体は硬くなり、体色が現われてくる。
飼育下では不完全な羽化も多い。

inserted by FC2 system