北海道生物図鑑
管理人が自然探索の際に出会った北海道の生き物の生態写真を図鑑的な写真集としてまとめております。

オオルリオサムシ
Damaster gehinii

オサムシ科
分布
北海道
体長 26〜33mm
環境省レッドリスト
北海道RDB
備考 北海道固有種
撮影日
2010/8/26
撮影または採集地 苫小牧市

<特徴・生態>
平地〜山地に生息。 北海道特産種で美麗種
黒松内低地帯より東側に分布し、生息地はやや局地的。

体色は金属光沢がある赤・緑・青・黒など。道南では青系が多いが、道央では緑系を中心に赤系、藍系が混じり、道東〜道北へ行くにつれ赤系の割合が多くなる。
他のオサムシ類同様、雄より雌の方が大型で、雄の前脚「ふ節」が雌より幅が広いことで区別できる。
(ただし産地によって体長の傾向に違いがある)
また、道南に行くにつれて前翅の条線が途切れて点状に近くなるが、反対に道北、道東に行くと条線は途切れず線条になっていく傾向にある。

5月中旬〜7月上旬に最も多く活動し、幼虫、成虫ともにカタツムリを捕食する。
夜行性で日中に見かけるのは稀なので、採集にはPT(ピットフォールトラップ)をしかけるのが効果的。また側溝内にもよく入り込んでいるので、側溝採集も効果的な採集法。
春〜初夏に現れる成虫は主に前年羽化した越冬個体が多く、晩夏〜秋に現れる成虫は羽化したての個体が多い。
ただし晩夏〜秋に現れる新成虫は活発に動き回らないのか、側溝でもあまり見かけない。

春〜初夏に交尾・産卵する。産卵後の成虫はほとんど死んでしまうらしいが、飼育下では1年ほど長生きする個体もいる。
卵は短期間で孵化し、幼虫はカタツムリを捕食し成長する。
幼虫の成長は早く、夏には蛹化し、数日で羽化する。(幼虫で越冬し、翌年羽化する個体もいる)
新成虫はカタツムリを後食しないと成熟しない。

1990年日本昆虫学界において北海道の虫とされている。


側溝内でカタツムリをむさぼる♀

<オオルリオサムシの亜種>
オオルリオサムシ Damaster gehinii gehinii (基亜種)道央南部
キタオオルリオサムシ Damaster gehinii aereicollis 道北〜道東
ヒメオオルリオサムシ Damaster gehinii manoianus 空知郡南部
サッポロクビナガオサムシ Damaster gehinii sapporensis 日高アポイ岳
アラメオオルリオサムシ Damaster gehinii radiatocostatus 日高山脈南〜南東部
コンセンオオルリオサムシ Damaster gehinii konsenensis 根釧原野
シャコタンオオルリオサムシ Damaster gehinii shimizui 積丹半島
後翅が退化しており飛ぶことができないため、大きな河川を挟んだ両地域や山塊毎などに生息する個体群は、分布の隔離や空白地域があることから多くの亜種に分けられている。
前翅の条線や色彩などの違いから亜種名を大まかに特定できるものもあるが、外見では区別できないほど差がないものも多い。しかも各亜種の境界地域ではお互いの亜種の特徴を持った亜種間雑種が見られるらしく複雑になっている。

最終氷期にサハリン経由で北海道に侵入したクビナガオサムシの一種が分岐したものであると推測されているが、これよりかなり古い時代に侵入したマイマイカブリは北海道で一亜種しかないのに本種に関してはいくつかの亜種に分かれている。


飼育観察はこちら


<越冬>
オオルリオサムシは土中で越冬する。(朽木内では今のところ確認されていない)
主な越冬場所は、雪解け時に水没することがない土盛りや斜面の上部で、軟らかな土質を好む。
このような環境では、他のオサムシ、ゴミムシ、シデムシなども好んで越冬するため目安となり、本種がまとまって越冬していることもある。

意外と浅い場所に潜っている。
撮影日:2010/11/19
撮影場所:千歳市


撮影日:2010/11/26
撮影場所:苫小牧市

越冬場所である林内の土盛り
撮影日:2010/11/19
撮影場所:千歳市



<札幌市南区>
体色は金緑色〜金銅色が多い。豊平峡〜中山峠の個体はやや小型が多い。
キタオオルリオサムシ(亜種)のような条線がほとんど途切れない個体も稀に見かける。
体長:♂25〜30mm ♀28〜33mm




<ニセコ町・共和町(ニセコ型)>
体色は、明るい青緑色〜藍色で、たいへん美しい。
体長はやや小型。
体長:♂約28mm






<苫小牧市支笏湖周辺(支笏湖型)>
サイズは大きく、体色のバリエーションが豊富。
千歳の個体群より光沢が強く、色彩に深みがあり美しい。
体長:♂30〜31mm ♀33〜35mm









<千歳市>
この地域は、オオルリオサムシの一大産地であり、個体密度が高い。
サイズは大きく、体色のバリエーションも豊富なためコレクション性が高いが、光沢が弱い傾向にある。
体長:♂30〜31mm ♀33〜35mm




他産地では稀な黒色♀







<苫小牧市勇払(勇払移行帯型)>
体色は頭部と前胸背板が紫色〜赤紫色を帯び、上翅が濃紺色となる個体が多い。
他に金緑色・赤銅色などやや暗めの体色が多い。
体長:♂28〜31mm ♀31〜33mm




<黒松内町(月越型)>
黒松内低地帯はオオルリオサムシの分布南限で、これより南はオシマルリオサムシの分布範囲となる。
体色は金緑色と赤銅色で、大型の個体がみられた。

体長:♂30mm ♀37mm




<富良野市(富良野型)>
芦別市〜富良野市にかけてが分布域で、亜種ヒメオオルリオサムシの分布域と隣接するため、やや小型傾向となる。
体色は濃藍色〜暗藍色が多い。
体長♂26〜27mm ♀29mm




<空知郡南部(亜種:ヒメオオルリオサムシ)>
Damaster gehinii manoianus
オオルリオサムシの亜種の中でも最も分布範囲が狭い。
(空知川と沙流川に挟まれた地域で、東限が狩勝峠〜日勝峠、西限が南富良野町幾寅〜日高峠あたりが分布域)
体色は主に上翅が藍色〜黒色で、頭部〜前胸背部は緑や紫色の光沢を帯びる。
体長は全体的に小型。

体長:♂24〜26mm ♀26〜28mm









<アポイ岳周辺(亜種名:サッポロクビナガオサムシ)>
Damaster gehinii sapporensis
様似町アポイ岳周辺を中心とした日高山脈南西部が分布範囲。
体色は上翅が暗藍色で、頭部〜前胸背部は緑や赤色の光沢を帯びる。

体長:♂26〜30mm ♀35mm






<広尾町(亜種名:アラメオオルリオサムシ)>
Damaster gehinii radiatocostatus
北海道南部〜南東部に分布。
体色は、主に前胸背部は赤銅色、上翅が金銅色。間室の凹凸が著しく粗い。
いくつかの他亜種分布域と接するので境界付近は、本亜種の特徴が弱くなる傾向にある。
体長:♂約27mm


<釧路市(亜種名:コンセンオオルリオサムシ)>
Damaster gehinii konsenensis
根釧原野に分布。
体色は、主に赤銅色で側縁部周辺は金緑色の光沢となる。
体長:♂28〜30mm


<石狩市浜益(亜種:キタオオルリオサムシ)>
Damaster gehinii aereicollis
道北に分布する個体群は「亜種:キタオオルリオサムシ」とされ、浜益は亜種のほぼ南限に位置し浜益型といわれる。
条線が途切れている個体が多く、体長は小型傾向。
体色の大部分は金緑色と緑を帯びた赤銅色。

体長:♂25〜28mm ♀30〜32mm








<鷹栖町〜幌加内町(亜種:キタオオルリオサムシ)>
Damaster gehinii aereicollis
体色は赤銅色で、緑色の金属光沢をわずかに帯びる個体が多い。

体長:♂約28mm ♀約32mm








<中頓別町(亜種:キタオオルリオサムシ)>
Damaster gehinii aereicollis
体色は赤銅色で、幌加内産と大きな差はないが条線の途切れがほとんどない。
体長:♂約27mm


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