北海道生物図鑑 管理人が自然探索の際に出会った北海道の生き物の生態写真を図鑑的な写真集としてまとめております。 |
Micadina conifera ナナフシ科 |
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<特徴・生態> 本州以南では標高の高いブナ・ミズナラ帯に生息しているが、北海道では低山地に生息。 主な産地は函館付近とむかわ町付近で、局地的かつ断続的な分布。 日当たりの良いミズナラやカシワ、クリなどの樹上に生息し、その葉を食べる。 体色は緑色で、胸部背面と前翅、後翅前部が一直線上に赤紫色となる。 動きは緩慢だが、体色が保護色となっているので、葉上にいるとなかなか見つけづらい。 体型は細長く、脚も長いので弱々しい印象がある。 翅はあるが、和名の「トビ」がある通りに飛ぶことはできない。 不完全変態で、脱皮を繰り返し成虫になる。 雌のみで、単為生殖をする。(今のところ雄は確認されていない) 産卵は葉や土中など特定の場所に産み付けるのではなく、ばら撒くように産み落とす。 卵は地面に落下し、そのまま越冬した後、春に孵化する。 そのためか卵は硬くて丈夫な構造をしている。 成虫 撮影日:2011/8/20 捕獲場所:むかわ町 飼育下で成虫になったばかりの個体。 脚を伸ばして棒のような体勢をとり、葉に擬態している。 数日後、腹部がどんどん膨れていき産卵し始める。 成虫 体は細いが、頭部は少し大きめで豆のような形をしている。 6齢幼虫(体長は約40mm) ミズナラの木でスィーピング採集。 生息地では普通に見られるようで、ひとつのミズナラの木には数個体が確認できた。 採集には、目視による確認がしづらく、木の高い場所(しかも葉の表面)にいるので、柄の長い補虫網でスィーピングした方が効率的に採集できる。 撮影日:2009/8/11 撮影場所:むかわ町 ※ 個人的に、本種の北海道における不自然な分布が気になる。 あまり注目されない昆虫であるため未だ詳しい分布は分かっていないが、北海道では年々個体数が増え、分布が広がっているような気がする。 写真の撮影場所では一見自然林のように見えたが、各所で本州などからの木の移植が見られたので、本州からの苗木に卵が混入したことによる移入ということも考えられなくもない。(仮説) |
成虫の頭部側面 |
成虫の頭部裏側 |
成虫の腹部末端 腹部下面にはY字の小さな突起がある。 |
成虫の腹面 |
前翅は小さく退化した状態。 |
後翅は体の割りには小さく短いので、飛んだり、滑空したりできない。 木から落ちたときに、広げて衝撃を和らげる程度の機能しかないようだ。 |
長い脚は、葉から葉へ移動するのに便利と思われる。 ミズナラの葉をよく食べ、よく糞をして、よく産卵する。 蛾の幼虫やハムシは葉脈を残す傾向にあるが、本種は関係なく食べる。 |
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卵 飼育下では、成虫になってから8日後に産卵開始し、10月中旬まで生きて、1個体当たり190個近く産卵した。 |
卵は縦2mm×横1mmほどの大きさで、植物の種子のようだ。 硬く、網目模様があるのが特徴。 |
孵化 |
初齢幼虫(約8mm) |
初齢幼虫(約15mm) 撮影日:2010/6/8 撮影場所:むかわ町 |
初齢幼虫 撮影日:2010/6/8 撮影場所:むかわ町 |
2齢幼虫(約20mm) 弱々しい体だが、葉を揺らしても簡単には落ちない。 |
3齢幼虫 頭部が少し大きくなった。 |
6齢幼虫 撮影日:2009/8/11 撮影場所:むかわ町 |
6齢幼虫から成虫へ脱皮した後の脱皮殻 撮影日:2009/8/12 |