北海道生物図鑑 管理人が自然探索の際に出会った北海道の生き物の生態写真を図鑑的な写真集としてまとめております。 |
Chionea sp. ガガンボ科 |
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<特徴・生態> 低山地〜山地に生息。 冬季(11〜3月頃)に現れるガガンボの仲間で、林内の雪上で見かける。 発生のピークは12月初旬〜1月初旬。 「氷河期の生き残り」と言われている。 体色は薄茶色〜黒褐色で、雌雄共に前翅は退化しており僅かな痕跡しかない。後翅は他の双翅目同様に平均棍(後翅が退化した棍棒状のバランス器官)となっている。 脚は細長く、雪上を歩く姿はまさにクモに似ている。 雌の腹部末端は細く尖っているのが特徴で、雄の腹部は尖らずに先端に特殊な把握器(交尾器)を持つ。(写真上の個体は雄) クモガタガガンボの仲間は日本に数種が分布しているが、研究が不十分なため正確な種類数、生活史などほとんどが謎の昆虫。 北海道には現在チビクモガタガガンボChionea (Chionea) crassipes gracilistyla とニッポンクモガタガガンボChionea (Chionea) nipponica の2種が分布していることになっている。 成虫の活動適温は+1.5〜−6.5℃の狭い範囲で、水しか飲まないらしいが、飼育下で昆虫ゼリー(クワガタ用)を与えると、好んで吸い付いていた。 体の凍結を防ぐため、体液中にグリセロールなどの不凍物質を含むといわれている。 自然下での寿命は不明だが、飼育下では10℃で10〜20日、−1〜5℃で30〜40日程生きた。 見つけるコツは、日の当たる林内の雪上で、晴れた日の昼頃が良く、気温が極端に低い日や風が強い日、雪がたくさん降っている日は雪上に現れない。 夜行性とも言われているが、少なくとも北海道で見られる種は日中によく活動している。 (朝には見かけなく、曇ると活動が鈍る。もしかすると日光には関係なく、気温さえ適温なら昼夜問わず活動するのかもしれない。) 雪上に植物の種や木屑などの細かいゴミが落ちていない場所の方が探しやすい。 よく目を凝らすと、歩いている個体を見つけることができるが、雪上には小型のクモ、タマバチの一種、ハエ類もいるので紛らわしい。 産卵から成虫までの過程を記した飼育観察はこちら→「クモガタガガンボの一種」 クモガタガガンボの一種♂ 体中に細かい毛が密生している。 クモガタガガンボの一種♀ 平均棍(後翅が退化した棍棒状のバランス器官)の前部に、僅かに残った極小の前翅が確認できる。 |
北海道に生息するクモガタガガンボは現在「チビクモガタガガンボ」と「ニッポンクモガタガガンボ」の2種がいるが、外見上異なるタイプが数タイプあるのを確認しているので、ここでは個人的に3タイプに分けてみた。(それぞれが別種という訳ではない) |
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Aタイプ(小型・黒褐色) 体長は3.5〜4mm程で、雄の後腿節は大きく太くならないのが特徴。 |
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Aタイプ♂ |
Aタイプ♀ |
Bタイプ(大型・黄褐色〜黒褐色) 体長は5〜6mm程で、体色は時間経過または気温低下で黒化する事がある。(飼育経験からの仮説) 雄の後腿節は顕著に太くなるのが特徴。 |
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Bタイプ♂ 触ったり、息を吹きかけたりなど刺激を与えると、脚を折り曲げ縮こまり動きを止める。 撮影日:2020/12/6 撮影場所:旭川市 |
Bタイプ♂ 腹部先端にある把握器の形状で種類の区別ができるらしいが・・・ |
Bタイプ♀ 撮影日:2009/12/24 撮影場所:札幌市 |
Bタイプ♀ 撮影日:2020/12/6 撮影場所:旭川市 |
♂上面 左:Aタイプ 右:Bタイプ |
♀上面 左:Aタイプ 右:Bタイプ |
♂側面 上:Bタイプ 下:Aタイプ |
♀側面 上:Bタイプ 下:Aタイプ |
※ AタイプがチビクガタガガンボChionea (Chionea) crassipes gracilistyla でBタイプがニッポンクモガタガガンボChionea (Chionea) nipponica と思われるが、詳細を記した資料が手元にないので確証はない。 |
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Cタイプ(大型・黄褐色) 体長は約5mm、雌の産卵器(産卵管)が短いのが特徴。雄については不明。 Cタイプ♀とBタイプ♂を一緒にしても交尾に至らなかった。 |
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Cタイプ♀ 撮影日:2012/12/13 撮影場所:札幌市 |
Cタイプ♀ 抱卵しているとはいえ、腹部がBタイプよりやや太く長く感じる。 |
Cタイプ♀ 産卵器がAやBタイプの雌と比較して極端に短い。 |
Cタイプ♀ |