北海道生物図鑑
管理人が自然探索の際に出会った北海道の生き物の生態写真を図鑑的な写真集としてまとめております。

ニホンザリガニ
Cambaroides japonicus
エビ綱 エビ目 アメリカザリガニ科
分布
北海道・本州(東北北部)
体長 40〜70mm
環境省レッドリスト 絶滅危惧II類(VU)
北海道RDB
備考 日本固有種
撮影日
2007/6/14
撮影または採集地 札幌市

<特徴・生態>
山地の周縁部で、冷たい湧水がわずかに流れる溝や沢に生息。(低水温の湖にも生息)
本州産のものは北海道からの移入といわれているが、青森産はいくつかの外部形態で北海道産との違いがあるため自然分布の可能性もある。(岩手産、秋田産は移入の可能性が高い)
近縁に朝鮮半島原産のチョウセンザリガニCambaroides similis がいるが、ロシアやサハリンにはニホンザリガニは確認されていない。

体色は赤褐色〜暗褐色。
移入種のアメリカザリガニより小型で、はさみは丸みが強い。
アメリカザリガニは頭胸部が長く、高さがありエビ体型に近いが、ニホンザリガニの頭胸部は丸みを帯びており、ややつぶれた体型をしている。
アメリカザリガニやウチダザリガニより性格は荒くない。

普段は泥の中や石や倒木の下に隠れており、主に広葉樹の落ち葉(半腐食)を食べている。
森林に対する依存度が高く、環境の変化にたいへん弱い。
性成熟(繁殖できる大きさ)になるまで約5年かかり、長命で10〜11年生きると考えられている。
抱卵数は50個程度で、ウチダザリガニ(約100〜500個)、アメリカザリガニ(約100〜700個)に比べてかなり少ない。

農薬や伝染病、移入種ウチダザリガニによる駆逐、生息環境の破壊が減少の原因。
湖沼に生息する個体群は、移入種のウチダザリガニやブラウントラウト等のマス類によってほぼ絶滅状態にある場所が多い。

かつては食用にもされていたが、肺臓ジストマの一種(ベルツ肺吸虫 )の中間宿主であるので生食は危険。

アイヌ語名は「テクンペコル・カムイ」(手袋を持っている神)、「ホロカレイエップ」(後退り・する・もの)など。

→飼育観察はこちら


雌雄の見分け方

 ● 雄は雌よりはさみが大きい(アメリカザリガニのように顕著ではない)
 ● 
雄は第1腹肢と第2腹肢が発達して交尾肢となっており、雌の第1腹肢は小さく退化的。
 ● 
雄の生殖孔は第5脚基部に一対ある。
 ● 
雌は第3脚基部に生殖孔が一対ある。
  
成熟した雌は、卵巣の発達する時期(10〜12月)になると尾肢や腹側板の腹側が乳白色になる。(セメント腺)


雄の腹面

雌の腹面




抱卵中の雌(体長は約7cm
撮影日:2006/7/21
撮影場所:札幌市



生息地(札幌市)
写真のように、見た目は水が流れていない山の斜面でも、わずかに水が山地からしみ出している場所なら生息している。
土質は粘土層であるが、表層は餌となる落ち葉が堆積している。
この場所は、生息可能範囲はかなり狭いが個体密度が高い。

生息地は多いが、少しの開発であっけなく全滅してしまうような環境がほとんど。
「気が付いたら絶滅していた」ということにもなりかねない。



♂上面:全長7cm


♀上面:全長7cm


幼生:全長1cm
秋になるとこのサイズをよく見かけるが、春になると激減してしまう。
越冬に失敗するのか、大型のザリガニに捕食されてしまうのか?

撮影日:2008/10/4
撮影場所:札幌市


はさみが欠損している個体は、左側が多い気がする。
撮影日:2008/6/12
撮影場所:ニセコ町


撮影日:2008/10/4
撮影場所:札幌市

撮影日:2008/10/4
撮影場所:札幌市


稀に現れる青いタイプ
生息地によって発生確率が異なるが、数百〜数千分の一といわれている。
先天性のものは、遺伝子異常での色素欠損で、鮮明な青色をしているのが特徴的。脱皮しても青色のまま。
後天性のものは、餌などの環境の影響で一時的に青色となったもので、色むらがある個体が多い。脱皮すると一般の赤褐色に戻ってしまうことが多い。

ニホンザリガニの胃石(脱皮前に頭胸甲の中にできるカルシウム分)
ラテン語でオクリカンキリ(蟹の眼)と呼ばれ、かつて胃薬や利尿剤と重宝されたらしい。
左右は同じもので直径約4mm。
片面(左)はやや膨らみ、その裏側(右)の中央部は凹んでおり、市販のエノキ茸の傘の部分に似ている。
写真の胃石は少々汚れているが、本来の色はもっと白い。

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