飼育観察

カエルなどの両生類を気持ち悪いって嫌う人は多いですが、キャラクターグッズなどになっているし、よく見たらかわいい生き物だと思います。



エゾサンショウウオ
Hynobius retardatus
日本固有種で、北海道のみに生息。
北海道全域に生息しているが、年々生息地・生息数が減少している種類。

エゾサンショウウの生態の詳細はこちら



採集
春先に雪解けの水辺で産卵した卵はよく見かることができるが、成体は産卵時期以外は陸上生活で落ち葉の下などに隠れているため、見つけ出すことは困難。
早春に産卵のため水辺に集まる成体か卵の一部を採集するのが効果的。
産卵は止水域(雪解けの水溜り、水路、池や沼で産卵し、卵は白いゼリー質の卵嚢に覆われ螺旋状に巻いているので、エゾアカガエルの卵と区別しやすい。


安定した産卵場所である山地の池

飼育環境
飼育水槽 45cmガラス水槽
濾過装置 なし
床材 ADA アクアソイルマレーヤ
水苔
照明 なし
水換え 1ヵ月に一度
水辺と陸地に分けるが、成体は繁殖期以外陸上生活なので、水辺は狭く、浅くしてある。
隠れ場所として、植木鉢などを配置。
<飼育水槽>
床材を目の細かい袋(ストッキングなど)に入れることによって、陸場がしっかりと維持でき、水場に床材が流れ込むことを防止できる。
また水苔と床材が混ざらないので、管理しやすくなる。


飼育のポイント
 卵から孵った幼生は、頻繁に共食いをして成長するので単独飼育が望ましい。(共食いをした個体は急激に成長する)

 夏の高温に注意
直射日光を避け、涼しい場所で飼育する。30℃を超えるような日が続く場合、冷蔵庫に一時的に非難させた方が無難。

 蓋は絶対必要
蓋をしっかりしておかないと、ガラス面なら簡単に登って脱走し、数日後、部屋の隅で干からびた死体を発見することになるので注意。

 幼生を複数飼う場合は共食い防止のため、分けて飼育する。

 成体は、ひとつの容器に複数飼育しても問題ないが(ただし同サイズ)、飢えると相手の尾を食べるので十分に餌を与えること。


このように容易に脱出!



給餌
基本的に口に入るサイズならなんでも食べるが、軟らかい餌を好む傾向がある。
幼生の餌は市販の冷凍アカムシをピンセットから与えており、食いも良い。

「冷凍アカムシ」 幼生の餌に適している。
孵化直後の幼生には飲み込めないサイズもあるので、切って与える。

「冷凍イトメ」 孵化直後の幼生に適している。

「イトメ」 栄養価が高く、幼生の餌として最適? 
生餌なので長期間保管が難しい。
「バッタ」 野外で採集したバッタ(主にヒナバッタ)を冷凍保管し、必要時に解凍。
適度に細かく切って、栄養添加剤をまぶして与える方がいい。

「スジエビ」 野外で採集したスジエビを冷凍保管し、必要時に解凍。いわゆるエビの剥き身。
軟らかいので食いつきは良く、慣れていない個体も食べてくれる。

「カタツムリ類」 野外で採集したカタツムリを冷凍保管し、必要時に解凍。
適度に細かく切って、栄養添加剤をまぶして与える方がいいが、処理が面倒。
ナメクジは野菜によく付着しているので、それを与える。大きさも丁度よく、軟らかいので好まれる。
「ワラジムシ」 自然下での主な食べ物らしいが、殻が硬いので吐き出す個体もいる。(特に小さな個体)
脱皮直後の軟らかいものがオススメ。

「コオロギ」 ペットショップで購入でき生餌。
ヨーロッパイエコオロギとフタホシイエコオロギがいるが個体のサイズに合うものを選ぶ。
後脚を取り、頭部はつぶした方が良い。
「乾燥ヨコエビ」 少し水に浸してからピンセットで与える。
栄養添加剤をまぶして与えてもいい。
「レプトミン」
(テトラ ジャパン社)
少し水に浸し軟らかくしてからピンセットで与えるが、硬い部分があると嫌がる個体がいる。
ある程度成長した幼生には十分に水でふやかして、適度に切ってから与えるといい。
慣れると便利で経済的な主食となる。

「魚介類」 刺身などの魚介類は軟らかく食べやすいため、餌付けに慣れていない個体も食べる場合がある。
ただし、多用して良いのかは疑問。排泄物による汚れが問題点。

「ブラインシュリンプ」 熱帯魚の稚魚用としてお馴染みの餌。
孵化直後の幼生に適している。卵を孵化させるまで約1日必要。
幼生は成長が早いので、使用できる期間は短い。


鰓が消えて陸に上がる頃になると、生きた(動いている)餌しか食べなくなる。
ピンセットで餌を揺らしながら口に近づけて与える方法が良い。
ピンセット給餌は、全ての飼育個体に餌を十分に与えることができるので、弱い個体が餓死することはない。
幼生からピンセット給餌で飼育すると、慣れて水槽に近づくだけでと餌をねだりに近寄ってくる。(写真左)

成体を採集した場合、餌付けに慣れない個体が多い。


飼育記録
<採集個体>
山地の融雪プールで捕獲した個体。(越冬幼生予定の個体)

脚はあるがまだ鰓がある幼生。
全長は3.5〜4.0cm程でそれぞれの個体に大きな差はない。
幼生は、口に近づくものは何でも食べてしまうので、共食いに注意。

餌は冷凍アカムシ。
よく食べ、よく育つ。
<鰓がなくなり、上陸が近い幼生>
幼生から幼体(亜成体)へ変態する。
変態直後の幼体は金粉をまぶしたような模様があるが、成長するにつれ黒味が増していく。

飼育水槽の水を減らて浅くし、陸場の割合を大きくする。
上陸すると、動くものにしか興味を持たなくなるので、冷凍アカムシをピンセットで揺らして餌付けする。

また、頻繁に他の個体の尾に噛み付き食べてしまうのもこの頃なので注意。
餌を十分に与えても確実に防止できないので、噛み癖のある個体は個別に飼育する方がいいかもしれない。

上陸生活を始めると、主食はレプトミンや冷凍アカムシ。

夏の猛暑で水槽内の温度が30℃近くなってしまうと調子を崩してしまい、食欲減退、皮膚が壊死し白くなってしまう。(写真の個体の尾の基部)
保冷材を入れ低温を保ち、観賞魚病薬(グリーンFゴールドなど)の薬浴すると回復する場合もあるが、重症の場合は死に至る。

<飼育3年目の個体>
2年目で全長10〜12cm、3年目で13〜15cmに成長した。
それ以降は大きな差はなく、ゆっくりと成長する。
餌は均等に与えているつもりだが、個体差が出ている。

個体同士、尾の先端を噛み切ってしまうことがしばしばある。


<飼育下での産卵(産卵直後)>
水面から2〜3cm離れた場所に1対(2房)産み付けていた。
卵嚢は水分を吸収しておらず、縮まった状態。
1房に55〜60個の卵が入っていた。


<産卵後1日経過>
卵嚢は水分を吸って膨張している。
卵嚢は白濁しているので、卵割しているのか確認しづらい。


<産卵後4日経過>
神経胚期と尾芽胚期に成長した卵。


<産卵後6日経過>
前肢芽期に成長。体も長くなり尾も形成されている。


<産卵後8日経過>
指分化期。更に細長く成長し、魚っぽい形になる。
鰓や前脚が発生。
この頃から刺激を与えると反応するようになる。


<産卵後13日経過>
指分化期。
孵化した幼生。卵から出ているが、まだ卵嚢の中にいる。
卵内にいる個体も活発に動き始め、卵から出ようとする。

<産卵後15日経過>
指分化期。
卵嚢の外へ飛び出す。


3対の鰓と止水棲の特徴であるバランサー(鰓の前方にある糸状のもの)が1対確認できる。

<産卵後25日経過>
前脚が生え出す。


細い鰭みたいな前脚。
まだ指は確認できない。


<産卵後30日経過>
一部は共食いに適したした大きな頭部を持つ形態に変化する。
これを「共食いモルフ」と呼ぶ。
共食いをした個体は急激に成長していき、写真のような差が生じ始める。


前脚も成長し、指も確認できる。
後脚もわずかだが出ている。

<産卵後34日経過>
前脚は更に成長し、後脚もはっきり確認できるようになった。

モルフ以外の幼生は成長は遅く、前脚が少し出てきた程度。
全長は約1.5cmで倍近くの差がある。


<産卵後50日経過>
体全体が細くなり、鰓が小さくなった。
そろそろ変態し、上陸する雰囲気。

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