ガロアムシについて 分布 生息環境 生態(生活史) 生態(産卵〜孵化)
形態 採集法 飼育 引用文献
他種との比較 地域各種 - 標本・情報募集 更新履歴

ガロアムシの採集法
ガロアムシは個体密度が低く、散在しているため、一ヶ所でまとまって見つかることは少ない。
また、生息環境が特殊で、目視法(ルッキング)や灯火採集、捕虫網を使用する一般的な昆虫採集法では採集できない。
光の当たらない石の下や地下浅層に生息しているため採集する時間帯は特に留意する必要はない。

環境が異なっても採集法は基本的に同じで、全て肉体労働です。


<採集法>

谷の斜面での採集
必要な道具 ・剣先スコップ・軍手
・水分補給用の飲み物
・ヒグマ対策(クマ除け鈴・ラジオ・クマ撃退スプレーなど)
・沢を遡上しながら探すので、防水性の高いトレッキングシューズや登山靴、スパイク付の長靴が必要。掘削作業中、靴内に小石などが入り込むので、フットカバー装着推奨。
・丈夫で汚れても問題のない防水性・防寒性が高い服装

採集手順 @:地図の等高線や崖の表記から谷を確認し、場所の目星をつける。(峠付近の山地など)
等高線の間隔が狭く、高い位置へ突き出すように湾曲している場所は、両側が急斜面のV字谷で、大抵沢が流れています。(図1の矢印部分)
図1

A:現地で崩れかけて土が露出している場所を遡上しながら探す。(図2)
ただし、崩落して間もない場所は生息してないので避ける。
図2

B:「剣先スコップ」で表層を取り除き、脆い岩盤層や粘土が混じった多湿の礫層を探す。
土中が乾燥している場所はいないので避ける。


C:空隙が多い場所(礫や亀裂のある脆い岩盤)を見つけたら、それを少しずつ崩しながらガロアムシを慎重に探す。
粗雑に掘ると、潜んでいるガロアムシに気付かなかったり、潰してしまうおそれがあるので注意。
ナガコムシの一種が生息している環境は、ガロアムシのいる可能性も高く目安となる。

ひたすら掘る作業だが、深く掘る必要はなく、大体10〜30cmほど掘ればよい。
成虫は表層付近、小型の幼虫は深い場所(地下浅層)にもいる。

備考 希少なメクラチビゴミムシやヒラタクチキウマの一種も一緒に見つかることもあるので面白い。
注意事項
落石・地滑り誘発に要注意
目的地は、アクセスしやすい場所を選ぶ
ヒグマに注意

枯れ沢での採集
必要な道具 ・軍手、ピックマトック
・水分補給用の飲み物
・ヒグマ対策(クマ除け鈴・ラジオ・クマ撃退スプレー)
・丈夫なトレッキングシューズか登山靴が必要。(足を保護するため)
・丈夫で汚れても問題のない防水性・防寒性が高い服装
採集手順
@:枯れ沢で、ソフトボール〜ラグビーボール大の石(自力で動かせる石)が集まったガレ場を見つける。重い石はピックマトックを使うと楽。
雨が降ると水が流れる沢中央部より両脇の斜面側にいることが多い。

A:土に埋まっている石より、土との間に隙間がある石をひっくり返して探す。
探すのは石の下の地面で、石の裏面など石側に付いていることはほとんどない。
石を静かに手早く移動させると、ガロアムシを驚かして逃げられることが少ない。

備考 枯れ沢を狙って探すのは難しいので、「谷の斜面での採集」の際に、枯れ沢を見つけたら探してみるくらいでいいかもしれない。
注意事項
動かした岩で足を潰さないよう注意。
岩を持ち上げたりすると腰を痛めるので無理はしない。

雪渓での採集
必要な道具 ・軍手
・水分補給用の飲み物
・ヒグマ対策(クマ除け鈴・ラジオ・クマ撃退スプレー)
・丈夫なトレッキングシューズか登山靴が必要。(足を保護するため)
・丈夫で汚れても問題のない防水性・防寒性が高い服装
採集手順 雪渓の境にある岩場の石の下を探す方法。
「枯れ沢での採集」と手順は同じ。

備考 雪渓があるのは高山帯
注意事項 採集禁止の場所もあります。

トラップによる採集
チビゴミムシなど地下浅層性昆虫を目的とした地中埋め込みトラップに入ることがある。
仕掛けと回収で2日分要するため個人的に必要性を感じないが、一度は試してみたいと思います。


<運搬方法>重要

採集後、直ちに毒ビンやアルコール漬けにするなら問題はないが、高温と乾燥に弱いガロアムシ(特に幼虫)を生かせて運搬する場合は、注意して扱わないといけない。

@:採集したガロアムシを、保湿のために湿らせたティッシュや現地で湿ったコケ類を入れたタッパーに収納する。
(ガロアムシは運搬中の振動にも弱いので、ティッシュやコケはクッションの役割も果たす)
タッパーには空気穴を開けておく必要はない。

A:採集後、予め新聞紙で包んだ保冷材を入れたクーラーボックスにタッパーを収納し運搬する。
車で3〜4時間程度の運搬なら問題なし。
(保冷材の入れ過ぎで氷点下にならないように注意。)
保冷材がない場合、冷えた缶ジュースでも代用可能。


<標本作成法>
いろいろな標本作成方法がありますが、ガロアムシにはエタノール液浸標本が最も適している。

エタノール液浸標本法
液漏れしないサンプル瓶などに70%エタノールに漬けて固定する。
(DNA分析する場合は、生きている内に無水エタノールに漬けて固定)
エタノールの液量は標本に対して十分に入れなくてはいけない。
生きたまま浸漬させると、肛門から内臓が飛び出すことがあるので、予め酢酸エチルや冷凍庫でシメると予防できる。
標本は瓶から取り出して乾燥させず、そのまま浸漬させた瓶ごと冷暗所で保管する。(瓶にはデータを書き込んだラベルを貼り付ける)

無水エタノールは薬局で手軽に入手でき、ホルマリンより毒性が低く、扱いやすい利点がある。
高濃度アルコールで漬けると硬化したり、収縮してしまう欠点がある。



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